高配当株の選び方|会計士しぴえが教える”利回りだけで選ぶと失敗する”理由

高配当株・投資基礎

ぼくは会計士として10年以上、企業の財務諸表を読み続けてきました。その経験から断言できることがあります。「利回りが高い=良い高配当株」という考え方は、投資家にとって最も危険な思い込みのひとつです。

高配当株投資を始めようとしている方、すでに実践している方も、ぜひこの記事を読んでいただきたいと思います。会計士の視点から、利回りだけで銘柄を選ぶことがなぜ失敗につながるのか、そしてどう選べばいいのかを具体的に解説します。

利回りが高い理由を必ず疑う

配当利回りの計算式はシンプルです。

配当利回り=1株あたり配当金÷株価×100

この式を見ると、利回りが高くなるケースは2パターンしかないことがわかります。

パターン①:配当金が増えた(増配)
企業の業績が好調で、株主に還元できる余裕が増えたケースです。これは正真正銘の好材料です。

パターン②:株価が下がった(株安)
こちらが要注意です。株価が下がった理由が「業績悪化」「将来への不安」であれば、近い将来に減配・無配になるリスクがあります。

利回りが高く見えるのに株価が下がり続けている銘柄は、「利回り罠(イールドトラップ)」と呼ばれる危険地帯に入っている可能性があります。ぼくも過去にこの罠に近づいたことがあり、財務分析で気づいて踏みとどまった経験があります。高配当株を探すときは、まず「なぜ利回りが高いのか」を疑うクセをつけることが大切です。

利回り罠を見破る3つのチェックポイント

チェック①:配当性向

配当性向は「利益のうち、何%を配当に回しているか」を示す指標です。

配当性向=1株あたり配当金÷1株あたり純利益×100

例えば、純利益100億円の会社が80億円を配当に回していれば、配当性向は80%です。ぼくが考える目安は40〜60%。この範囲なら、業績が多少落ち込んでも配当を維持・増額できる余力があります。

一方、配当性向が80%を超えている場合は要注意です。利益がわずかに減っただけで減配に追い込まれる可能性が高くなります。100%を超えているケース、つまり赤字なのに配当を出している会社は、身銭を切って配当している状態であり、持続性はほぼありません。株探やIR BANKなどの無料サービスで簡単に確認できます。

チェック②:フリーキャッシュフロー(FCF)

会計の世界には「利益は意見、キャッシュは事実」という格言があります。利益は会計処理の方法によって操作できますが、現金の動きは嘘をつきません。

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、事業で稼いだ現金から設備投資を差し引いた「本当に自由に使えるお金」のことです。

FCF=営業キャッシュフロー-設備投資額

FCFが安定してプラスの会社は、配当を払い続ける体力があります。反対に、FCFがマイナスなのに配当を出し続けている会社は、借金で配当を賄っている可能性があります。これは長続きしません。有価証券報告書やIR情報のキャッシュフロー計算書で「営業CF」と「投資CF」の2行を確認するだけで、重要な情報が得られます。

チェック③:連続増配の年数

配当を何年連続で増やし続けているかは、企業の配当方針と財務体力を示す強力なシグナルです。日本株では10年以上の連続増配を続けている銘柄が「配当貴族」と呼ばれます。花王(30期超の連続増配)、三菱HCキャピタル、リコーリースなどが代表例です。

長年にわたって増配を続けてきた会社は、リーマンショックやコロナショックといった景気後退期を乗り越えてきた実績があります。それ自体が企業の底力を証明しています。連続増配銘柄は「配当利回りランキング」ではなく、「連続増配ランキング」で探すのがおすすめです。

高利回りより「配当の持続性」を選ぶ理由

ぼくが高配当株投資で最も大切にしているのは、利回りの高さではなく「この配当は10年後も続いているか」という視点です。

利回り7%の銘柄が翌年に無配になれば、その時点で投資の目的は失われます。しかし、利回り3%でも毎年着実に増配してくれる銘柄は、10年後には購入時の株価に対して5〜6%の利回りになっていることがあります。これを「Yield on Cost(投資元本に対する利回り)」と呼びます。

例えば、株価1,000円・配当30円(利回り3%)の銘柄を購入して、その後10年間で配当が年5%ずつ増え続けたとします。10年後の配当は約48.9円となり、購入価格1,000円に対する利回りは約4.9%になります。これが長期配当投資の醍醐味です。

まとめ:利回りは入口、財務分析が本命

高配当株を探すうえで、利回りは「気になる銘柄を見つける入口」に過ぎません。本当に大切なのは、その利回りが財務的に裏付けられているかどうかです。

  • 配当性向は40〜60%が理想、80%超は要警戒
  • FCFがプラスで安定しているか確認する
  • 連続増配の実績があるか(5年以上が目安)

この3点を確認するだけで、利回り罠を避けられる確率が大きく上がります。会計士として財務を読み続けてきたぼくが、自分の投資判断にも使っているチェックリストです。次回は、ぼくが実際にポートフォリオを組む際に重視している財務指標について、さらに詳しく解説します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました